同軸トラップ 「TOP」


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ここまでスミスチャート上の、同軸ケーブルの長さによるインピーダンス変化の様子を説明してきました。ちょっと分かりづらかったかもしれませんが、単純に、同軸ケーブルの中のインピーダンスは、負荷Zからの距離に応じて等SWR円上を時計回りに回り、1/2λ’(λ’は同軸ケーブル内での波長、λ’=λ×短縮率)ごとに1周して戻ってくる、ただこれを言いたかっただけです。

YAAトラップは、1/4λ’のケーブルでインピーダンスが半周するという性質を用いています。以下は基本原理です。順を追って説明していきます。

不思議、1/4λ’の長さの同軸



上の例は、ただ同軸を1/4λ’の長さにちょん切ってRIGに接続した図です。RIG直下で測ったインピーダンスZ’はいくらでしょうか。「先っちょに何にもつないでいないんだから∞に決まってるじゃん」・・・ホントですか?ちょっと待ってください。Z=∞(Ω)と特殊なケースですが、これもスミスチャートにプロットしてみましょう。Z=∞(Ω)を50Ωで割って正規化するとz=∞ですね。



z=∞は、直感どおりSWR=∞の等SWR円上に存在します。そしてZから1/4λ’離れた位置の正規化インピーダンスz’は等SWR円を時計回りに半周した「ゼロ」であることが分かります。Z’はz’=0に50Ωをかけたものなので、「0Ω」となります。「ん−、∞ではなかったか・・・」

先っちょに何もつながれていない同軸(オープン)を1/4λ’引き回すと、RIG側はあたかもショートしている(0Ω)ように見えます。不思議(下図)



それでは逆に、1/4λ’の同軸の先っちょで芯線と編線をショートした場合を考えてみましょう。今度はZ=0(Ω)ですから、同様にプロットしてみると・・・



みなさんのご予想通り、RIG直下のインピーダンスZ’=∞(Ω)となります。これは先ほどと逆で、RIG直下があたかも、オープンな状態に見えます。つまり、RIGにコネクタも何もつないでいない状態です。



ここではインピーダンスが0と∞と入れ替わる不思議な現象を紹介しましたが、この性質を利用して必要な周波数帯を通し、不要な周波数帯をカットするフィルターを作ることができます。

簡単なフィルターを作ってみよう!

上の性質を利用して、簡単な、7MHz帯に対する3.5MHzキラーを作ってみましょう。

必要な周波数帯 7MHz
カットしたい周波数帯 3.5MHz



一番初めに紹介した形の同軸トラップです。トラップ部分には3.5MHzの1/4λ’の長さの同軸ケーブルをつけただけのものです。これはあたりまえですが、7MHzの1/2λ’にあたります。先っちょはオープン(ちょん切ってそのままの状態)です。注意:オープンの場合は先端が高電圧になり危険ですので必ずビニールテープや自己融着などで絶縁してください。

たったこれだけで、7MHzは何事もなかったように通過し、3.5MHz帯の電波をカットしてくれます。「どうしてそうなるの?」と気になる方向けに、どんな動作をしているのかをみていきたいと思います。

・7MHzの高周波を考える。
いまRIGからアンテナに向けて7MHzの高周波が流れているとします。7MHzからこの同軸トラップを見るとどうなっているのでしょうか。トラップ部(A−B)の長さは、7MHzに対しては1/2λ’の長さになるので、Bで測ったインピーダンスは、Aを基点に等SWR円上をぐるっと1周して元に戻ってきます。つまり、AとBのインピーダンスは等しいので、Tコネ直下のBにおけるインピーダンスも∞Ω(オープン)になります。





つまり7MHzが通るときはこのように見えるわけです。
これは、50Ωと∞Ωのインピーダンスが並列に入っていると見ることができるので合成インピーダンスは以下のとおりになります。分子分母を形式的に∞で割って・・・



と、RIGから見ると50Ω、すなわちSWR=1でマッチングが取れています。この計算はするまでもなく、Tコネにアンテナ以外何もつながっていないことを考えると素直に理解できる結果ですね。


・3.5MHzの高周波を考える

次に不要な3.5MHzが流れているとします。3.5MHzからみるとトラップはどんな働きをするのかを見てみましょう。

同軸トラップ部分は、3.5MHzの1/4λ’で設計してあるので、Tコネ直下(B)のインピーダンスは(A)のインピーダンスが時計回りに半周した位置の0Ω、つまりショートしているように見えます。





3.5MHzが通るときは7MHzが通るときと違って、このように見えるのです。全く同じフィルターなのに通る周波数帯によってインピーダンスが異なって見えるのですね。とても不思議な現象ですが、このおかげでフィルタリングできるというわけです。この場合は50Ωと0Ωが並列に入っていると見ることができるので、合成インピーダンスは、



と、RIGから見ると0Ω、すなわちSWR=∞となり、3.5MHzはカットすることができることが分かります。ここでは3.5MHzからみたアンテナのインピーダンスも50Ωとしましたが、この計算結果から分かるように、アンテナインピーダンスはどんな値でも合成インピーダンスは0Ωになります。

7MHz SWR=1
3.5MHz SWR=∞

このフィルター(先っちょオープン)は、他のバンドからのかぶりを除去するフィルターですが、先っちょがショートしたフィルターを用いれば、自分のバンドから出る高調波を除去することができます。なぜそうなるかは考えてみてください。

ヒント:例えば、3.5MHz帯を通し、2倍高調波の7MHzを抑えたい時は、

3.5MHz SWR=1
7MHz SWR=∞

となればいいのだから・・・さっきのフィルターとインピーダンスが(0⇔∞)逆になればOKですね。


次は、PSJさんのサイトで紹介されている21MHzに対する7MHzキラーの仕組みをスミスチャートを用いて紹介していきたいと思います。



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